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Audio Project

このページでは当オーディオ装置の構築プロセスや音質改善のための体験を通して同好の皆さんとの交流の場にしていきたいと考えています。掲載内容についてご意見ご質問など有りましたらメールどうぞ
Email to:SUZUKI ELECTRIC.



EMT 930 TURNTABLE


EMT-930モーターを選んだ理由は、バロック系クラシック音楽を再生することの多い私としては何としても光悦スペシャルバージョンカートリッジの性能を最大限に発揮させたいという思いから、必然的にトレース能力の高いダイナミックバランス型トーンアームが不可欠ということでダイナベクターDV507MKUしかないと結論付け、このアームが使える高精度モーターはといえばEMT-930しか無いだろうということでの選択だったのです。927モーターの良さも実感してはいたのだが、ショートタイプのDV507MKUが使えないという理由を付けて高価な927を諦めたのです。EMT-930モーターを使うにあたっては進相コンデンサー&サープレッサー抵抗の交換と220V外部供給電源の導入が不可欠でした。標準装備の粗悪なMPコンデンサーとホーロー抵抗ではどうにもマトモな音にはならないので、3mm厚真鍮板とセラミック端子台を使用してCeramic Cap+Sprague Resistorによる進相コンデンサーユニットを製作しました。その後、真鍮板を取り外しアルミナボードとセラミック端子という組み合わせでGR-SS+アルミナプレート3枚下敷きとしてこの部分の改善は終了したと感じています。また、モーター駆動用の220V供給にはアメリカ製1KVタイプのトロイダル型アイソレーショントランスを100V:220Vで使用し220Vライン用ヒューズにはWE製1/4A(Fast Blow)タイプをパラレルで使用しています。先日EMT-927にも取り付けましたが1/2Aパラ使用でバッチリでした。このヒューズの音の良さを知ればそれなりに知名度のあるLITTELFUSEやBUSSMANなどのアメリカ製スローブローヒューズもそれ程でもないことが分かります。


TURNTABLE SHEET & RECORD STABILIZER

情報量を減らさずに余計な変調のかからない最も優れた素材ということを第一に考えるならばオーディオリプラス製水晶シート以外に選択肢はないと思います。また、アナログレコード再生に必要なセンタースピンドルで使用するレコードスタビライザーも水晶製が不可欠で、如何に着色の少ない信号をMCトランスやプリアンプに伝送するかという目的を達成するためにはターンテーブルシート同様極めて重要ではないかと考えます。高周波発信素子として使用される単一振動モードを持つ単結晶水晶振動子に着目したスタビライザーやインシュレーター、ターンテーブルシート、カートリッジシェルなど物理振動を可聴帯よりも高い共振周波数で拡散させることでオーディオ帯域に影響を与えずに効果的に振動を処理する方法として、これ以上有効な素材は先ず以って存在しないのではないかと思います。


KOETSU MC CARTRIDGE

ダイナベクター507MKUの高感度アームで最高の性能を発揮出来るカートリッジといえばKOETSU以外に存在しないのではないかと思います。画像は初代光悦さんが長年温存していた原石から切り出した気泡の全く無いヒスイケースで、間接音の表現力に長けたトレース能力の高いボロンカンチレバー+プラチナマグネット+WE OLD MAGNET WIRE仕様というスペシャルバージョンカートリッジです。どんなに優れた高品質カートリッジが出現しようとも、小手先のごまかしなど一切受け入れてくれそうにないオイロダインKl L439+平面バッフルという類い稀なるスピーカーシステムを使い続ける限り、繊細で残響の長いバロック系の再生において独壇場とも思える程のリアリティーを発揮する光悦スペシャルバージョンカートリッジを安易に否定することは出来ません。


MC STEP UP TRANS

WE 201 TYPE COREを使用した光悦MCカートリッジ用昇圧トランスで昇圧比は1:15と比較的低めの設定です。入出力端子はWE製を使用し設置用インシューレーターにはAudio Replas GR-SS+RSI-M6を使用しています。WE555Wや594Aスピーカーを使用していた20~40代の頃はWE261Bや208PなどにSPUやTYPE-C、FIRCHILD 225A等を組み合わせてジャズやロックなどを楽しんでいましたが、KLL439スピーカーの導入と共にWE純鉄リングコアを使ったMCトランスを使うようになり、ようやくクラシック音楽が聴けるようになったという気がしました。職業がら比較的多くのMCカートリッジ用昇圧トランスなるものを聴く機会に恵まれましたが、古典的なローコンプライアンス型カートリッジ+パーマロイコア型MC昇圧トランスあたりで情緒的に音楽を鳴らすならそれなりに雰囲気も有りあれやこれやと音の違いを楽しむことも出来るでしょうが、クラシックレコードのオーディオファイル盤あたりを再生して、音の良いコンサートホールの上席にでも身を置いているかのような気分にさせてくれる程のクオリティーを求めるなら、WE系マイクトランスやライントランスなどの流用や親指の先ほどの小型パーマロイコア型MCトランス辺りでは役不足感が否めないのではないかと思います。私たちが求めているHi-Fi再生のためのMCカートリッジ用ステップアップトランスというアナログレコード再生の根幹を成す昇圧トランスにこれぞというものがほぼ皆無という現状を踏まえれば、可能な限り音質の良いコア(ここでは磁路に切れ目が無く比較的ブロードな磁気特性の純鉄コアを指します)を使い、そのカートリッジのインピーダンスにマッチした昇圧トランスの製作が必要になります。


PREAMPLIFIER

プリアンプの再構築を思い立ってから数か月経ってやっとここまで進んだので画像をアップしてみました。先ずはシャーシ加工と大まかな部品の取り付けが終了したという状況です。以前のプリアンプと回路的には何ら変わるところのないのない単純な4段構成終段プッシュプル600Ω出力フラットアンプということなのだが、いざ製作となるとあれもこれも使ってみたいし、ここはこういう構造にしようなどと欲が出てしまい意外に時間がかかってしまった。現用機と違うところは国産アルミシャーシからアメリカ製鉄シャーシに変更したことと、物理振動に対する影響の大きいアルミナボード+セラミックターミナルポストを使用したことぐらいでその他の大きな変更は無い。今回のアルミナボードの導入は、すでにLCR EQや600ΩATTなどで十分な音質改善効果を得ているので大きく期待を裏切るようなことにはならないとは思いますが、いずれにしても電気的振動の伴う増幅系機器での物理振動対策がどれほどの効果が有るものなのか大いに興味の有るところです。


LCR RIAA EQUALIZER

構想から半年近く経過してやっと完成したMONORAL LCR EQ(RIAA/COL/AES/FFRR)だが、今回はあまり時間もないので1.8H/45mHのインダクターは以前のままで使用することにした。とはいえ元々1.8Hは64A RET PRESS CORE、45mHは25A REP WIRE COREを使用しているので極端に新旧の差が出るとは考えていない。いずれにしてもOLD BELDEN MAGNET WIREの威力を知ってしまった以上どこかのタイミングで巻き直しをしなければと考えているが、中々時間のかかる作業だけに今一歩踏み出せずにいる。ちなみに、配線材にWE LITZ WIREを使用しているため緩やかなカーブを描きながらの配線を余儀なくされ、結束することもままならないので乱雑な配線になってしまったが、いつもながらどこにどう使っても音の良いケーブルだ。

半年ほど前からお使い頂いているMONO LCR EQに新たに2種類(DIN & CCIR)のカーブを増設したいとのご依頼が有り早速設置してみたのですが、後日DINカーブで聴くDG最初期10インチモノ盤がとても素晴らしいとの喜びの声を届けてくれました。それならば本機にも付けてみようということになったのだが、しかし私のレコードストック棚にはいわゆるDG盤白33(というらしい)などという最初期盤など1枚も有るはずもないので、現時点では検証してみようにも全く以って無理なのだ(笑)。それにしてもどのEQカーブに切替えても全くクオリティーの落ちない新型LCR EQ UNITの構築により新たなレコード音楽の世界が広がるかもしれないという中々興味深い展開になって来た。

初期のDG MONO盤にはAESに似通っているがAESに比べ高域が僅かに上昇するというCCIRというカーブがDG MONO盤の多くに合致するとの新たな情報を頂いたので、早速試してみようと思い当装置ではあまり利用することの無いEQ PASSスイッチをCCIR用に変更してみました。

最近海外から届いたばかりのDG MONO(LPM18180/Haydn/Fricsay)をAES⇔CCIR交互に切替えて聴いてみたのですが、当装置に限ってという条件付きでは有るもののやはりCCIRの方がバランスよく聴こえます。

その後の新たな情報として、この手の旧盤を数多く所有されているS.Oさんの検証によるとDIN CURVE(GY1) CCIR CURVE(GY2/GY3) になるとのことですが、GY3の後半にはRIAA CURVEまで出現するそうで、如何にもEQカーブ統一を目前にした業界のドタバタ感が感じられる当時の状況を表しているかのような興味深い検証結果だったようです。それにしてもクラシック音楽をこよなく愛されているS.Oさんのアナログレコードに対する造詣の深さにはいつもながら感心させられます。

画像は最近入手したDGG LPM 18001のGY1(1953年)とGY2(1956年)です。DINとCCIRカーブでの聴き比べも面白そうです。


600Ω ATTENUATOR

PREAMP→LCR EQ→本機というラインナップで従来から使用しているものに少し手を加え、WEインチラックに鉄製ベースを使い高純度アルミナプレート+セラミックターミナルポストにSPRAGUE BLUEJACKET RESISTORを設置していますが、単純な機能だけに不確実な要素を極力排除し正攻法での攻略が必要な部分だと感じています。


MATCHING TRANS(600Ω:20KΩ)


こちらは600Ω型アッテネーターとパワーアンプの間に接続するマッチングトランスとして製作したものです。私のアンプはプリもパワーも比較的ハイゲインなためトランスのレシオ比をそれほど高く取る必要がないので5倍程の昇圧比(600Ω:15KΩ)で製作しました。このトランスのコアはWE201型インプットや61A/B RETなどを解体したもので、本機はケースによる音の違いを比較する意味も有ってWEトロイダル型トランス用鉄ケースに封入してみました。この201型トランスの最も魅力的なところはF特が広く誇張感のないニュートラルな音楽表現をしてくれるところです。


POWER AMPLIFIER


このパワーアンプは6AB7-6AG7-INT(WE201 CORE)-4D32pp-5Kpp:0-8-16Ω/50W Output Trans の3段構成で+B供給用電源には371Bと705Aをパラレル接続にしています。6.3VのヒーターDC点火はLR独立でセレニウム両波整流チョークインプット回路を採用し、平滑用コンデンサー(2,000MF)は積層セラミック型をアルミナボード上に設置しています(詳しくは下段のHT電源の項参照)。
4D32というパワー管の素晴らしいところは、一般的な認識として「図体の大きな球は大雑把な音がする」という定説をいとも簡単に覆してくれるだけの繊細さと緻密さ、広帯域特性、フラットなエネルギーバランスなど、音楽再生に必要な増幅管としての全てを兼ね備えているかのような気にさせてくれるところです。もちろん前段を構成している2本のメタル管も並みの電圧増幅管ではありません。巷でもてはやされているWE系ST型電圧増幅管はどれも内部抵抗が高く付帯音が多いので、私達が目指しているハイファイオーディオ再生装置の構築という観点からは先ず以って候補に上がることは有りませんが、3極電圧増幅管の中でも比較的マトモな音のするKEN-RAD 6C5(METAL)や6SN7GTなどがことごとく寝ぼけて聴こえてしまう程本機に使用しているKEN-RAD6AB7や6AG7の3結は色付けが少なくパワフルでシャープな名刀の切れ味のような音がします。要約すれば星の数ほどある電圧増幅管の中でもKEN-RAD 6AB7-6AG7の二段増幅は物理振動が少なく直線性に優れた単5極管を3結で使用することで、並みの電圧増幅管とは桁違いの広帯域特性と付帯音の少ない強力なドライブ力を兼ね備えた前段増幅回路を構成することが出来るということなのです。


2025/4/29~30 連休に入り少し時間が取れたところで半年ほど前から計画していたパワーアンプの再構築を始めたのだが、製作開始から3日目でやっと目鼻が付いたので画像をアップしてみました。予定ではWEオリジナルラックマウントシャーシに組み上げるつもりでいたのだが、スペース的に少々無理な状況になって来たので、いずれ電源でも組もうと思って保管してあった少々サイズの小さな鉄製シャーシ2台にL/Rを独立した形で製作してみることにした。しかし、L/R独立型とはいっても前段用のデカップリング回路を片方のシャーシに設置したため画像のような外観になってしまった。デカップリング回路の重要性を体感している私としては、同一電源からB電源を供給する真空管式パワーアンプでは各段ごとの厳重なデカップリング回路がいずれ必ず音質的効果を実感することになるとの思いが有り、敢えてスペースファクターの悪い全段チョーク型デカップリング回路を採用している。今回の主な目的は鉄製ケース+アルミナボードへのCR設置がもたらす物理振動対策がどれだけ音質的に影響が有るのかというセンシティブな部分の検証なのだが果たしてどうなることやら。


2025/5/1 朝から音出しを始めたのは良いが、物理振動による影響なのか前機と全く同じ定数というわけにも行かず改めて電圧調整を兼ねて音のバランスを取るための作業が必要だ。せっかくだから少々見栄えのしないデカップリングチョークのひとつをシャーシ内に収めることとし、グリッドサープレッサー抵抗や初段管のB電圧供給回路を見直したりした結果少しずつ音も落ち着いてきたようだ。しかしながら、部品の配置やシャーシの材質、配線の引き回し等によって音の出方が変化するのは当然だとしても、何台となく同じ形式のアンプを製作して来たがその都度出てくる音が違うのには少々驚くが、それだけ僅かなコンストラクションの違いを如実に表してくれるアンプだということなのだろう。
2025/5/6 ここ数日間プリアンプの不具合なども有りあちらこちらを調整しながら試聴を繰り返しているが音質的にも大分落ち着いてきた感じで、少しずつではあるがアルミナボードへの部品設置や2Aケーブルでの内部配線等が効果を発揮してきたかなと思わせる音になって来た気がしています。
2025/5/7~8 昨日から僅かに高域の分解能が気になっていたので、B回路のデカップリングチョークのひとつをWEトロイダルコア製に変更してみたが、これ一体どういうこと?というほど一気に全てが解決してしまった。以前からプリアンプのB回路のデカップリングにもWEトロイダルコアインダクターを使用して来たが、改めてこのインダクターの凄さを実感した気がします。
今回の音質改善のポイントは当初の思惑通りCRパーツの物理振動対策が効を奏したことは間違いないと思いますが、デカップリング回路のCRをもアルミナボードを介して設置したことがこれほどの大きな相乗効果が得られるとは想定していませんでした。



INTERSTAGE TRANS

私の装置ではプリアンプとパワーアンプの両方にWE201型コアを使用した位相反転トランスを使用しています。どちらもレシオ比は1:1+1で全くゲインのない位相反転だけのためのトランスです。インターステージのように比較的信号の大きい回路でのトランスによる大きなインピーダンス変換は、Hi-Fiアンプの構築という目的を達成しようとする場合必ずしも得策ではないと考えられます。また、インターステージトランスの一次側にDCを重畳する回路では、一聴して力強い感じを受けますが音楽鑑賞用のHi-Fiアンプには適しません。そうなると必然的にパラレルフィード回路で使用することになりますが、これまたCRの品質の問題になります。WEに夢中になっていた頃はWEピッチペーパーや38抵抗などを使用して一人悦に入っていた時期も有りましたが、あの付帯音の多い分解能の悪さがクラシック音楽のアナログハイファイ再生というセンシティブな目的達成にはそぐわないものだと理解するにはそれなりの時間を要した記憶があります。


KLANGFILM Kl.L439 + FLAT BAFFLE SPEAKER SYSTEM


SP装置の移動から約半年経ってようやく天井の高さが効果を発揮し始めた感がある。ルームチューニングの難しさもさることながらアンプ系の設置方法やMCトランスの配置方法など数多くの難関を乗り越えてやっとここまで来たという感じです。改めてルームチューニングに係る物理振動やオーディオ機器の設置の際のインシュレーター等の導入に無関心ではコンサート会場並みの質感で音楽を再生することなど不可能だということを思い知らされた気がします。
ここ数日間何枚かのレコードを繰り返して聴いてみたが、少しルームチューニングをやり直してみる必要があると感じていた矢先に近所のNさんが来訪されたので、手助けをしてもらいSP後方壁のチューニング材を少しばかり移動してみた。オイロダインKl L439と平面バッフルというセンシティブなスピーカーシステムのせいも有るだろうが、チューニング材をほんの数センチ上下左右に移動するだけで音のバランスがコロコロ変化する。少し拡散させると全体的に穏やかな傾向になりドライバーの真後ろ付近にチューニング材を取り付けると音楽の集中力が増す。低域から中高域に関してはカーネギーホールにも導入されているQRDが最も有効なことは分かっているが、中高域から超高域帯の調整にはAudio Replas製ルームチューニング材の効果的な配置を探さなければならない。30分ほど位置をずらしながらながら試聴を繰り返してみたが中々良い感じになって来た。このところの音質改善は高域側チューニング材の移動もさることながら、低域〜中域にかけての処理に最も効果的なQRDディフラクタルの当初からの設置が相乗的効果をもたらしていることは間違いないと思います。


ここでは以前掲載していたスピーカーの設置について一部内容を改め再掲載しています
このオイロダインKl L439スピーカーシステムは1200×1500mmサイズのメイプル集成材にシェラック塗装した平面バッフルに取り付けて使用しています。床への設置方法は、バッフルが左右に倒れない程度まで出来る限り中央寄りに足を取り付け響きの妨げにならないようにし、バッフルの一番上側から斜め後方に角材を振り下ろして足の最後部と連結しています。ここのところはバッフル全体の振動エネルギーを受止めるところなのでより硬質な桜材を使っています。後方側の連結部は左右に開くようにし、振り下ろした角材は足の内側に固定していますが、この接合部分を足の外側で連結すると音が濁る傾向が有ります。また、ローエンドまでクリアな低域を出す目的で後方に延びた足の上にやや厚め(15mm)のファブリックボードを設置しました。敷いた板と足の間やバッフル裏側の桟にはリプラス製水晶インシュレーターを設置し、足そのものも床に直置きせずに前方にGR-SSを後方に100HG-SS HRを装着しています(ここはバッフルが前に倒れないように少し後ろに重心を置くための配慮です)。バッフル裏側の補強材にはオーディオリプラス製インシュレーターを設置しバッフルの不要共振を可聴帯外に拡散するようにしました。そして床と水晶の間にはファブリックボードを敷いて床材の吸音を出来るだけ防ぐようにしています。こうすることで、低域が出にくく高域が粗いなどと酷評されることの多いKl L439から軽くて歯切れの良い低域と澄んだ高域がバランス良く再現されるようになりました。しかしながら、これもハイスピードで余裕たっぷりの電源を持つ4D32ppパワーアンプや4D22ppプリアンプ、WE純鉄コアトランス等の相乗効果が有ってのことだろうと思います。ちなみに、平面バッフルで構成するスピーカーシステムの場合、SPユニットをバッフルから浮かして固定し、バッフルに直接SPの響きを伝達しない方法はユニットからの直接音と残響の短さを我慢できるなら簡単にそこそこの音がしますが、バロック系などの残響の長い楽器の響きや管弦楽や交響曲などのホールトーンとは無縁な再生音になってしまいます。平面バッフルで生演奏に近い実在感の有る再生音を望むなら如何に共振の少ない方法でバッフルをバランス良く響かせるかにかかっています。




Kl.L349 SPEAKER 2WAY NETWORK


オイロダインを導入するにあたってネットワークは自分で製作するという前提が有りました。オリジナルネットワークのインピーダンスは12Ωですが、KL406のインピーダンスが7.5ΩでKL302が12Ωということでインピーダンスマッチングを取るためにウーハー側にマッチングトランスを使用して12Ω:7.5Ωとしているが、このオートトランスが音を悪くしている要因にもなっている。それならばということで、KL406を8ΩとみなしKL302の高域減衰用抵抗とボイスコイルインピーダンスを合成抵抗としてー7db減衰時のCとRを算出し単純な6db/oct -3db クロスとした。LにはWE針金コアとWEリングコアから外した黒エナメルワイヤー7本撚りを使用し、Cには積層セラミックをシリーズ接続、RにはSPRAGUE BLUEJACKET 10W型巻線抵抗をパラレルで使用した。入出力端子はWECO製セラミック型で配線材にはSPケーブルと同様のWEリッツワイヤーをシルクテープで絶縁しシェラックで含浸したものを使用しています。このネットワークの音の良さを実感してしまうとオリジナルネットワークの回路構成や粗悪なパーツの使用がオリジナルオイロダインの過小評価に繋がっているひとつの要因となっているのではないかと感じています。



ISOLATION TRANS & POWER OUTLET

200V⇔100VアイソレーショントランスにはWESTERN INC製(5KVA)とアメリカ製トロイダル型アイソレーショントランス(1.5VA)を使用しています。各アンプのヒーター回路やEMT-930のモーター駆動用にはトロイダルアイソレーショントランスから供給し、その他の高圧整流ユニットへの供給にはWESTERN INC製を使用しています。これ以降の電源タップにはオーディオリプラス SBT-4SZ/HG-MK2SRとSBT-4SZ-MK2SRを使用していますが、このパワータップのOutletは2基ともWattgate 381 RH evoに変更してあります。全ての電源用接続ケーブルにはWE2A LITZ WIREを電流容量に合わせてパラ接続で使用しWattgate 330 RH evoを通して各機器に供給しています。

日頃から親しくお付き合いを頂いているお客様からのご厚意によりお譲り頂いたIsoTek EVO3 SIGMASを使用し好結果が得られたのをきっかけに単独使用を目的としたスペースファクターの良いコンパクトな電源クリーナーをと思いあちらこちら探していたらUK仕様のIsoTek NOVA ONE EVO3というデットストック品を見つけたので早速導入してみることにした。

2025/4/7 一週間ほどで届いたコンパクトなNOVA ONE EVO3(画像右)なのだが、果たしてこの程度のモノでそれ程多くを期待していいものかどうかという不安も無いわけではないが先ずは設置してみようということになった。本機はUK仕様なので前もって購入しておいたロジウムメッキタイプUK PLUGにWE2A LITZ WIRE+WATTGATE 330RH evoを使ってプリとパワーアンプのセレニウムヒーター電源に供給することにした。AC入力側はEVO3 SIGMASと同様SBC-2SZ(改)からの出力をWG-330RH evo→WE2A LITZ WIRE→WG-350i RHを使用しての電源供給だ。夕方頃から数枚のレコードを聴いてみたが導入前に比べ一層落ち着きが出た感じが有る。バックハウスのピアノ(DECCA)やクーベリックのシューマン交響曲(DG)あたりも中々良い感じだ。とはいってもこればかりは数日間あれやこれやと聴いてみなければ分からないので早とちりは禁物なのだが先ずは導入成功といって良いだろう。


FULL-WAVE SELENIUM RECTIFIER HT SUPPLY

以前からプリアンプのヒーター点火について色々と実験しては来たのだが、今回改めて両波整流型DC点火をテストしてみることにしました。元々、当店のプリアンプやパワーアンプは増幅部本体と電源部本体、HV電源の3台のシャーシもしくはHT電源を独立させた4台で構成されていますので、一般的なアンプからすればスペースファクターの悪さは特筆もんで、その上新たに巨大LR独立HT電源なるものを加えるというのは流石にちょっとやり過ぎだろうと思っていたのですが、しかし、今回変更するアンプは6BX7pp構成のプリアンプですのでL/R共通回路で良いのでまだマシかというところで早速完成した電源ユニットをお客様のお宅に持ち込み試聴してみました。なんと傍熱管プリアンプのヒーターDC点火回路を変更しただけで装置が別物になってしまった〜いやいやそれはちょっと言い過ぎですが、そのくらいの表現をしたくなるほどの劇的な音質改善効果は想定外でした。WEダイオードと整流回路の変更だけでこれだけの音質改善効果が有るのなら、古くからフィールドスピーカー用励磁電源や光電管エキサイター、バッテリーチャージャーなどに使われたタンガーバルによる両波整流も試してみる必要が有るのではないか?という誘惑にもかられますが、6.3V-8ADC以上にもなる電源2系統をタンガーバルブを使って点火するとなると、今でさえも発熱との戦いになってしまった感のある我オーディオ装置にこれ以上世の省エネムードに逆行するような悪行?は厳に慎まなければ〜と我に返ったところで、それなら熱エネルギーによって電子の移動を促す必要のないセレニウム素子による整流ならどうだろうか。こちらは4D32ppパワーアンプ用なので手っ取り早くシングルチョークで実験。音質は何も言うことが無いといえるほど素晴らしいものになりました。例えれば、今まで使用していたWEダイオードの両波整流が高級デジタル一眼レフの細部までクッキリと見渡せる超リアリティーな表現だとすれば、今回のセレニウム整流は細部まで見渡せる繊細さとリアリティーはそれ程大きくは変わらないが、もう少し自然なボケ味のアナログ中判カメラのような穏やかで優しさを感じさせる音、敢えていうなら一層コンサート会場の音に近づいたような気分にさせてくれる音という感じがします。遅きに失した感の有るセレニウム両波整流チョークインプット回路の導入からスタートしたヒーターDC点火回路の再構築でしたが、結果的にはアメリカ製ALUMINA CERAMIC PLATE & CERAMIC TERMINAL STRIPによる物理振動対策とCERAMIC CAPACITORによるフィルター回路のハイスピード化が功を奏したのではないかと感じています。傍熱管でさえヒーター点火の質によってこれほどの音質改善が有るのですから、大方の管球アンプファンが好むであろう直熱管アンプのフィラメント点火ではさぞかし大きな変化が有るだろうと思いますが、直熱パワー管の性能がフィラメント電源や高圧整流電源の高品質化に追従出来るほどの電気的物理的潜在能力を持っているかどうかは少々疑問ではあるが。


HIGH VOLTAGE +B SUPPLY

般的な真空管式オーディオアンプでは両波整流管1本で電源供給をしているものがほとんどですが、当店で製作するアンプでは必ずといっていいほど複数の整流管を使用しています。以前の記述内容と重複する部分も有るかもしれませんが改めてB電圧電源について述べてみたいと思います。個人的にも20〜30代頃まではWE274A/Bや280(ナス管)が最も良い音のする整流管と思い使い続けていた時期も有りました。その後WE 46アンプなどを使い始めると直熱3極管205Dを2極管接続にして半波整流管として使っているのに驚き、何故このような使い方をしているのか?と思いきや何のことはない内部抵抗の高さが整流ノイズ抑制効果としての役割も果たすことと、緊急時のスペア球の確保が容易という理由だったのではないかと考えられます。もっとも、整流管製造の難しさもさることながら、内部抵抗の高い205Dなどの直熱3極管を整流管として使用すれば当然ながら音も良いということで一石二鳥とはこのことだと納得しました。その後に開発された274A/Bや280などもオキサイド型両波整流管の中では比較的内部抵抗の高い整流管ということでそれなりに素性の良い整流管といえますが、それはあくまで一般的なアンプに使用する標準的なという意味でのオキサイド型両波整流管に対する評価であって、トリタン型整流管371Bや705Aなどの付帯音の少ないハイスピード半波整流管との比較ではありません。オーディオアンプの質的向上を目指すプロセスの中でほぼ間違いなく電源回路の不備がネックになることは多くのベテランオーディオ愛好家諸氏が痛感されているであろうと思いますが、願わくばタイミングを失することなくヒーター点火方式を含めて電源の重要性を再認識して頂ければと思います。ご自身のリスニングルームがちょっとしたコンサートホールに早変わりしたかのような気分で音楽を楽しみたいと願う熱烈な音楽愛好家の皆さんには是非ともトリタン整流管+チョークインプット整流方式の音の良さを体感して頂きたいものです。

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